OpenAIは、EU AI Act への対応として、ChatGPTとCodexの欧州ユーザー向けテキスト出力に不可視透かし「textGrain」を数週間以内に自動適用すると発表した。一方でAPI利用者については、世界中でオプトイン方式を採用し、ユーザー自身が透かしの有無を選べるようにする。全世界のClaude出力に透かしを強制するAnthropicとは対照的な、柔軟性を重視した設計だ。

適用範囲と仕組み

透かしはEU圏内のChatGPTおよびCodexユーザーに自動的に組み込まれ、ユーザー側で無効化することはできない。これに対しAPIを利用する開発者は、世界中どこからでも透かしの適用をオプトインで選択できる仕組みになっている。すでに全世界のClaude出力へ透かしを強制適用しているAnthropicと比べると、OpenAIはより選択の自由を残した形だ。

検出精度には限界がある

textGrainの検出精度は条件によって大きく変動する。400トークンの心理学関連テキストでは約95%の検出率を示す一方、200トークンまで短くすると約80%に下がる。さらに、単語の10%を別の表現に置き換えると検出率は92%から66%へ低下し、25%を置き換えると20%未満まで落ち込む。つまり、軽い編集や言い換えだけで透かしの実効性は大きく損なわれる。

検出ツール自体へのアクセスも、現時点では研究者や専門機関に限定されており、一般ユーザーが自分でAI生成テキストかどうかを確かめる手段は用意されていない。

開発者・ユーザーへの影響

EU圏でChatGPTやCodexを日常的に使うユーザーは、透かし適用を拒否する選択肢がないまま対応を迫られる。一方、API経由でアプリケーションを構築する開発者にとっては、オプトインという柔軟性がプロダクト設計上の選択肢を広げる。

AnthropicとOpenAIという大手2社が、同じEU規制に対して異なるアプローチを取った事実は、今後の業界標準がどちらの方向に収束するかを注視すべき局面にあることを示している。検出精度の限界が示す通り、透かし技術は規制対応の第一歩に過ぎず、回避技術との競争はこれからも続くとみられる。