新規株式公開(IPO)を控えるAnthropicが、投資家向けに30兆ドルを超える総利用可能市場(TAM)を提示していることが明らかになった。AIモデルが理論上担当できるあらゆる業務を積み上げて算出した数字で、同社が描く成長ストーリーの根幹をなす一方、その前提には懐疑的な見方も出ている。

直近の実績とIPOの目標額

Anthropicの直近四半期の収益は11.6億ドルで、前年同期の約2倍に達した。同社は2028年時点で1900億〜2000億ドルの収益を見込んでおり、IPOでは企業評価額約2兆ドル、調達額最大1000億ドルを目標に掲げているという。

TAMとは「仮に100%の市場シェアを獲得した場合に得られる理論上の年間収益」を意味する指標だ。Anthropicが示した30兆ドルという数字は、AIモデルが代替・支援しうるあらゆる業務領域を対象に含めた、かなり広範な定義に基づいている。

懐疑論の根拠

この数字に対しては、現実の市場規模との乖離を指摘する声がある。記事は比較材料として、テック企業191社が前年に稼いだ総収益が合計2.4兆ドルにとどまったことを挙げている。TAMはあくまで理論上の上限であり、実際に企業が獲得できる収益とは大きな差が生じるのが通例だ。

IPO前の企業が野心的なTAMを掲げること自体は珍しくないが、AI業界ではOpenAIやxAIなど競合も同様に巨大な市場規模を主張しており、投資家が各社の数字をどう相対評価するかが焦点になる。

投資家・業界への影響

Anthropicの評価額目標2兆ドルは、既存の上場テック大手に匹敵する水準だ。IPOの成否は、Claudeの企業向け需要が実際にどこまで伸びるかという実需のトラックレコードと、AI業界全体への期待値のバランスにかかっている。TAMの数字だけを鵜呑みにせず、四半期ごとの実収益の伸び率や競合との価格競争の行方を注視する必要がある。