米控訴裁、Anthropicの国防総省「供給網リスク」指定を2対1で正式支持
ワシントンDC連邦控訴裁判所は2対1の多数意見で、国防総省によるAnthropicの供給網リスク指定を支持した。Anthropicは数十億ドル規模の損失とIPOへの影響を訴えており、再審理や連邦最高裁への上告を検討している。
ワシントンDCの連邦控訴裁判所(DC巡回区控訴裁判所)は2対1の多数意見で、国防総省がAnthropicを「供給網リスク」に指定した措置を正式に支持した。今年2月にPete Hegseth国防長官が下した指定が確定し、Anthropicは米国のAI企業として初めてこの指定を受けた状態が続くことになる。
対立の発端
国防総省は、AnthropicがAIモデル「Claude」に対する使用制限の緩和を拒否したことを理由に、同社を供給網リスクに指定した。緩和が求められたのは、監視システムや自律型兵器システムなど、国家安全保障上の用途とされる領域だった。Anthropicはこうした用途への利用がAIの安全性原則に反するとして、制限の維持を貫いている。
多数意見を書いたGregory G. Katsas判事は、「国防総省がClaudeの設計を操作し、同省が契約上認められ必要と見なす国家安全保障機能を実行できなくする可能性をAnthropicが持つことを、同省が合理的に懸念した」と指摘した。この指定により、米軍によるAnthropicのモデル利用が禁じられるだけでなく、国防総省と取引する防衛関連企業にも同社モデルの使用が制限される。
食い違う法廷判断
今回の判断は、今年8月にカリフォルニア州の連邦地裁判事が下した判断と真っ向から対立する。同判事は、国防総省がAnthropicのAI利用方針に対する批判を理由に同社を処罰したのは違法だと認定していた。Anthropicは声明で「別の連邦裁判所はすでに、政府による並行した指定を違法と判断している。われわれは自社の立場に自信を持っており、あらゆる選択肢を検討している」とコメントし、さらなる法廷闘争を示唆した。
控訴裁判所の判断はAnthropicに数十億ドル規模の損失を与えているとされ、同社が計画する新規株式公開(IPO)にも影響を及ぼしているという。一方で米国の情報機関はAnthropicのAIモデルを実際に活用しており、供給網リスク指定との整合性を問う声も出ている。
今後の展開
控訴裁判所は判断の即時発効を見送り、Anthropicに再審理の申し立てやDC巡回区の全判事による大法廷審理(en banc)を求める猶予期間を与えた。連邦最高裁への上告も選択肢として残されている。
今回の判断は、AI企業の安全性方針と政府の統制権がぶつかり合う構図を改めて浮き彫りにした。国防総省が推し進めるAI活用の要求に対し、開発企業がどこまで安全性の原則を譲らずにいられるかは、Anthropic以外のAI企業にとっても他人事ではない問題となっている。