中国の大手メモリメーカー、長鑫存儲技術(ChangXin Memory Technologies、CXMT)が、AIプロセッサ向けの高帯域幅メモリ「HBM3E」の少量生産を開始した。AI半導体の中核部品であるHBMで、中国メーカーが自国製の量産段階に到達したのは初めてとなる。

背景・文脈

HBMは複数のメモリチップを積層し、プロセッサのすぐ隣に配置することで、大規模AIモデルの学習・推論に必要な高速データ転送を実現する部品だ。市場はSamsung、SK Hynix、Micronの3社がほぼ独占しており、米国の輸出規制により中国企業はこれら先端HBMチップの調達が制限されてきた。CXMTの量産開始は、この調達制限を回避するための国産化努力の到達点にあたる。

詳細・内容

CXMTが手がけるHBM3Eは、SamsungやSK Hynix、Micronがすでに次世代の「HBM4」を量産している状況と比較すると、技術的に3〜5年遅れているとみられる。歩留まり率も約25%にとどまり、まだ量産効率の面で課題を抱える。

それでも中国国内のチップ設計企業はCXMT製HBM3Eの採用に動いている。AlibabaのT-Head部門とCambricon Technologiesがすでに同社のHBM3Eシリコンをテストしており、早ければ2027年に自社のAIプロセッサへの搭載を計画しているという。CXMTは上海市場でのIPOにより86億ドルを調達しているが、この資金はHBM開発には直接充てられていない。

業界・読者への影響

輸出規制下でも中国のAIチップ産業が独自にメモリ供給網を構築しつつある動きは、米中間の技術覇権競争における重要な変化点だ。技術格差はなお大きいものの、AlibabaやCambriconといった大手が実装に踏み出せば、中国国内のAIチップ生産におけるボトルネックが一つ解消される可能性がある。SamsungやSK Hynix、Micronにとっては、当面は市場シェアへの直接的な脅威にはならないが、中長期的な競争環境の変化として注視すべき動きといえる。