かつて AI 技術に慎重だったハリウッドが、大型投資による制作パートナーシップへと軸足を移している。Netflix、Lionsgate、Google といった主要プレイヤーが相次いで AI 企業への出資・買収を発表し、映像制作ワークフローへの組み込みを本格化させている。

大型投資と買収の相次ぐ発表

Netflix は AI 映像制作プラットフォーム InterPositive を $587M(約5.87億ドル) で買収した。InterPositive は Ben Affleck が共同設立した企業であり、その規模投資から Netflix がスタジオ級の制作能力を内部化する意図が読み取れる。

同時に Lionsgate は AI 動画生成企業 Runway に出資。Google は独立系スタジオ A24 に投資し、AI との協力体制を構築している。さらに Wonder Project と動画生成企業 Luma は合弁会社「Innovative Dreams」を立ち上げ、新しいハイブリッド撮影プロセスを共同開発している。

AI の役割:ポストプロダクションと環境制作

Netflix の共同 CEO は「従来の方法より高品質の出力をより迅速かつ効率的に作成している」と述べており、AI が効率面で期待されていることは明らかだ。

実際の AI の使途は以下に限定されている:

  • 初期段階: コンセプト可視化(ビジュアル開発)
  • ポストプロダクション: 色調整・グレーディング
  • 複雑なショット: 環境背景の生成・補足

新たなワークフローでは、俳優のパフォーマンスはすべて人間が演じ、その後 AI 生成の環境で囲むという構成になっている。つまり AI は「クリエイティブの土台」ではなく「制作効率の道具」という位置付けが保たれている。

業界と評論家の懸念

映像制作の未来について、やや悲観的な見方も聞かれる。俳優兼評論家 Matt Damon は「長期的に、そのような方法で映画を撮影するためのリソースが人々に与えられるとは思えない」と述べており、AI 効率化による制作予算の圧縮と、その先の雇用や業界構造への影響を懸念している。

ハリウッドが AI との共存を選びつつも、最終的な作品品質とクリエイターの役割をめぐる議論は、今後も業界内の課題として残る。