OpenAI の研究者 Jerry Tworek が新しい AI ラボ「Core Automation」を立ち上げた。7年間 OpenAI に勤務した研究者が独立を選んだ背景には、大企業内では「根本的な研究が難しくなった」という危機感がある。Tworek の挑戦は、OpenAI 出身者によって構成される新世代 AI ラボ「ネオラボ」の一部として、AI 研究の新しい方向性を示唆している。

OpenAI を離れた理由

Tworek は 2026 年 1 月に OpenAI を退職した。その際、彼は「OpenAI ではもはや基礎研究が不可能になった」とコメントしている。大規模言語モデルの開発競争が激化し、ここ数年の AI 企業は利益追求と既存モデルの改善に注力する傾向が強い。その環境では、根本的な科学的発見や、まったく新しい学習アルゴリズムの追求が難しくなったということだろう。

Core Automation の目標:「世界で最も自動化された AI ラボ」

Tworek が掲げるビジョンは大胆だ。「世界で最も自動化された AI ラボを構築する」というミッションの下、以下の方向で研究を進める予定だ:

  • 新しい学習アルゴリズムの開発:事前学習と強化学習の限界を超える手法
  • 新しいスケーリング設計:トランスフォーマーアーキテクチャより優れた基本設計
  • 小規模チーム × AI エージェント:有能な AI エージェントを活用し、大規模組織でなくても複雑な研究を実行可能に

特に注目すべきは、彼自身が行う研究プロセスを自動化することから始めるという方針だ。つまり、AI ラボとしての「食べる食べ物を自分で作る」姿勢で、AI エージェントの有効性を実証しながら進める構想である。

「ネオラボ」時代の到来

Tworek の Core Automation は、同じく OpenAI 出身者たちが立ち上げた新世代 AI ラボの一部として位置づけられている。例えば、以下のチームが同じカテゴリに属する:

  • Thinking Machines Lab:新しいアーキテクチャの探索
  • Safe Superintelligence:AI 安全性研究の新展開

これらのチームが共有する信念は「AI の進歩には根本的に新しいアプローチが必要である」ということだ。つまり、OpenAI や Google、Meta といった大企業による「モデルサイズ競争」は一つの限界に達しており、研究の向かう先は「スケーリング則外の新しい学習方法」にあると考えられているのだ。

業界への含意

Tworek らの動きが示すのは、AI 研究の分散化だ。ChatGPT や Claude といった大型モデルの開発競争は、NVIDIA、Google、OpenAI、Anthropic といった限定的な企業による「チップ争奪戦」へと焦点化しつつある。その一方で、新しい科学的発見を求める研究者たちは、より身軽で自由度の高い環境を求めて大企業を離れ始めている。

Core Automation のような小規模 AI ラボの成功は、今後の AI 発展が「大規模モデルの微調整」ではなく「アルゴリズムの根本的な革新」にシフトする可能性を示唆している。