Nvidia の CEO・Jensen Huang が日本を訪問し、日本政府の AI 国家戦略「Noetra」に同社の技術を統合する大規模な提携を発表した。この動きは、ロボティクスと製造業を軸とした「物理 AI」時代へ向けた、グローバル AI エコシステムの重心移動を象徴している。

日本の 1 兆円 AI 投資戦略に Nvidia が参画

日本政府は 2026 年から 5 年間で最大 1 兆円(62 億ドル)を投じ、2040 年までに官民合わせて 650 億ドルの AI・ロボット産業を構築する計画を発表している。この Noetra 戦略の中核に、Nvidia の新型 GPU・CPU アーキテクチャが組み込まれることになった。

Huang は訪問時に「AI の次の章は工場の床にある」と述べた。大規模言語モデル(LLM)の競争が米国と中国で激化する中、日本は産業ロボット・製造・農業といった「物理 AI」領域に特化する戦略を打ち出しており、Nvidia もその方針を支援する。

Cosmos 3 Edge の実装と 2028 年稼働予定

中核となるのが Nvidia の新プラットフォーム「Cosmos 3 Edge」だ。同社の Jetson Thor チップを搭載し、データセンターでの大規模計算をクラウドに依存せず、工場や現場のエッジ側で即座に推論できる設計になっている。

日本政府の国家投資計画では、2028 年に 140 メガワットの電力供給能力を持つ「Vera Rubin AI Factory」の稼働が予定されている。このデータセンターには Vera CPU 13,750 個、Rubin GPU 27,500 個が配置される。ロボット企業や製造メーカーは、ここから派生した計算資源を利用しつつ、現場では Cosmos 3 Edge で自律的に動作する仕組みだ。

46 社のロボット企業が統一プラットフォームを形成

提携に参画する企業は Sony、SoftBank、NEC、Honda、トヨタ、ファナック、安川電機、富士通、日立など合計 46 社に上る。これらの企業は、Cosmos 3 Edge を軸とした統一の制御プラットフォーム構築に着手している。

ファナック・オムロン・本田技研は既にテスト段階に入っており、2026 年度中の試験運用、2027 年の部分的な商用化、2028 年以降の本格展開を目指している。特にロボット制御・画像処理・データ分析といった領域で国内企業の技術的独立性が強化される見通しだ。

グローバル市場での日本の位置付け

日本が狙うのは 2040 年時点での AI ロボット市場の 30% 以上のシェア獲得。市場規模は約 1,330 億ドル(20 兆円)と評価されている。米国・中国が LLM の開発競争を繰り広げる中、日本は「現場 AI」という差別化軸で独自の競争力を構築しようとしている。

本戦略が実現すれば、2030 年から 2040 年にかけて、国内企業向けの AI 搭載ロボット 1,000 万台の配置が視野に入る。工場・製造・農業・介護・建設など幅広い産業での自動化が急速に進む可能性が高い。

Nvidia の参画は、こうした日本の戦略が技術的に実現可能であることを示す強いシグナルである。今後 2 年間は、各社の実装進捗が業界全体の期待値形成を左右するだろう。