ロボットの「脳」はGPT-2時代、Unitree株価50%下落が示す物理AIの壁
ヒューマノイドロボットの身体能力は向上したが、実務をこなす「脳」の性能が追いついていない。IPO後にUnitreeの株価が半減し、Tesla・Wayve・Uberなど各社の戦略の違いが浮き彫りになった。
ヒューマノイドロボットの身体能力は急速に向上しているが、実際の仕事をこなす「脳」にあたるAIの性能が追いついていない。TechCrunchによれば、この状況は言語モデルがGPT-2からGPT-3・ChatGPTへ進化する前段階になぞらえられており、物理AI(Physical AI)産業はまだ初期段階にとどまっている。
IPO後に株価半減、Unitreeが直面した現実
中国のロボットメーカーUnitreeは、IPO時に660億ドルの評価額を付けたが、その後株価は約50%下落した。原因はロボットの物理的な運動能力が向上した一方で、実用的な作業をこなす能力が伴っていないことにある。展示会でのデモンストレーションと、実際の現場での稼働との間に大きな溝があることを、市場が評価額に反映させた形だ。
この「デモはできるが仕事はできない」というギャップこそが、業界が直面する「GPT-2時代」の核心にある課題だ。ロボットが多様な環境・タスクに対応するための学習データが決定的に不足しており、TechCrunchはこれを「ロボティクスデータ危機」と呼んでいる。
汎用型か特化型か、各社で分かれる戦略
課題への対処法は企業ごとに異なる。TeslaはヒューマノイドロボットOptimusの開発を継続し、自動運転技術を持つWayveはその知見をロボット工学へ転用する戦略を取る。Uberもヒューマノイド型ロボティクス研究室を新設した。
一方、Gritt、Agility、Bedrockといった企業は、太陽光発電所の保守や産業用途、建設機械の操作など特定タスクに特化する道を選んでいる。Genesis AIのCEOはハードウェアとAIの共同設計を重視する立場を示し、Wayveのトップはプラットフォームに依存しない汎用的な開発を提唱するなど、業界内でも思想の対立がある。特化型企業は実世界データを効率的に集められる利点がある一方、汎用性という点では制約を抱える。
「ChatGPT的瞬間」は来るのか
自動運転はロボット工学の中で最も開発が進んだ分野であり、その基盤技術が他のロボティクス領域へ流用され始めている。ただし、次のブレークスルーの形については意見が割れている。Foxgloveは、流通の難しさからロボティクスには言語モデルのような「ChatGPT的瞬間」は訪れないと主張し、代わりにApple IIやIBM PCのような一般消費者向け製品の登場を期待すべきだと述べている。
読者にとっては、ロボットの「身体」の進化に目を奪われがちだが、実際の価値を左右するのは「脳」にあたるAIソフトウェアの成熟度だという点を押さえておく必要がある。展示会のデモ映像だけでなく、実運用データの蓄積状況が今後の業界動向を見極める指標になる。