ニューヨーク州は2026年6月10日、AI生成の人物を使用する広告に対して「合成パフォーマー」との明記を義務付ける法律を施行しました。昨年12月にキャシー・ホーチュル知事が署名したこの法律は、消費者保護と創作労働者の権利保護の両立を目指すもので、米国内での AI 規制が本格化する転機となります。

法律の主要な内容

新法では、ニューヨーク州内で配信される広告において、AI が生成した人物(実在する人物に見える画像やビデオ)を含む場合、その使用を**「目立つように開示(conspicuously disclose)」することが法律上の義務**になります。

適用対象は媒体を問わず、ソーシャルメディア、デジタル広告、オンライン動画広告など、あらゆる形式の広告に及びます。

罰則とコンプライアンス

違反した場合の罰則は以下の通りです。

  • 初回違反:1,000 ドル
  • 以降の違反:5,000 ドル

「合成パフォーマー」の明記が曖昧または隠れた場所(利用規約の下部など)にある場合も違反の対象となる可能性があり、広告主には明確な開示が求められます。

適用除外の範囲

映画、テレビ、ストリーミングサービスのコンテンツ、ビデオゲーム、言語翻訳機能のみを使用した広告、オーディオ専用広告は本法の適用除外となります。これは創作分野と技術活用に対する配慮を反映しています。

立法の背景と知事の意図

ホーチュル知事は、この法律について「ニューヨークではAIに支配させるのではなく、ルールを設定する」と述べ、本法が以下を実現する旨を強調しました。

  • 消費者を保護する
  • 創作労働者を尊重する
  • 責任あるイノベーションの最前線を維持する

業界の反応と対立

本法に対する業界の反応は分かれています。

支持派: SAG-AFTRA(画面俳優組合)は最大の支持者として、人間の俳優の雇用機会を守る施策として評価しています。

反対派: 米広告業界団体 4A’s は、法の遵守が「不確実性」を生じさせると懸念を示し、広告制作のコストと複雑性の増加を指摘しています。

米国内での AI 規制の拡大

本法の施行は、米国内での AI 規制が産業規制から消費者保護・労働保護へと拡大していることを示唆しています。連邦レベルでの包括的な AI 規制がまだ成立していない中、州単位での先制的な規制が加速する可能性があります。

特に、AI 生成コンテンツの透明性を求める動きは、今後の社会的信頼構築の鍵となるでしょう。広告企業は本法への対応を通じて、消費者からの信頼獲得に向けた実装例を示すことが重要です。


企業への実務的な影響

ニューヨークをターゲット市場とする広告企業やマーケティング部門は、以下の対応を急務とすべきです。

  • 既存の AI 生成コンテンツ広告の棚卸し
  • 「合成パフォーマー」開示の仕組みの実装
  • 制作チームへの研修と方針周知
  • 今後の広告ガイドラインの改定

本法は米国最大規模の都市州による規制であり、他州への波及効果も予想されます。早期の対応が企業のリスク低減につながるでしょう。