トランプ政権の半導体関税案、GDP年900億ドル減・データセンター2割中止の試算
トランプ政権が検討する半導体への広範な関税が、チップだけでなくゲーム機やサーバーなど関連製品にも及ぶ可能性が浮上。業界団体はAI開発の停滞とデータセンター投資計画の大幅遅延を警告している。
トランプ政権が半導体全般を対象とした新たな関税を数週間から数カ月以内に発表する可能性があると、Politicoが政権関係者8人への取材をもとに報じた。検討されている案では、チップ単体だけでなくゲーム機やデータセンター用サーバーなど、半導体を組み込んだ幅広い製品が課税対象に含まれる見通しだという。米業界団体はこの枠組みを「想像しうる最も愚かな方法」と批判している。
GDP900億ドル減、データセンター2割が遅延の試算
米コンピュータ・通信業界協会(CCIA)は6月時点の試算で、半導体とその関連製品への広範な関税がGDPを年間約900億ドル押し下げ、2030年までに計画されているデータセンター案件の約2割が遅延または中止に追い込まれると見積もっている。CCIAは5月、財務長官のスコット・ベセントに宛てた書簡でも同様の懸念を伝えており、約20の業界団体が連名で署名した。
書簡は、関税がスマートフォンやノートパソコン、タブレット、スマートウォッチなど「日常的なツール」の価格上昇を招き、家計がすでに圧迫されている米国の消費者にさらなる負担を強いると指摘する。CCIAは、AIを実際に使う入り口となる消費者向けデバイスの価格が上がれば、AIの普及そのものが遅れると警告している。
AI推進の方針と矛盾する副作用
今回の関税案が特に皮肉とされるのは、トランプ政権自身が掲げる「AI Action Plan」の狙いと矛盾しかねない点にある。データセンター開発が停滞すれば、米国内でAIインフラを拡大するという政権の目標に逆行する。CCIAはさらに、関税がデータセンター開発を国外へ押し出す可能性もあると指摘しており、国内投資を促すはずの政策が逆効果を生むリスクが浮上している。
政権内では、台湾積体電路製造(TSMC)のような外国企業が米国内での半導体製造に投資することを条件に、AI関連企業への関税免除を検討する案も出ているという。この方針は商務長官のハワード・ラトニックが特に支持しているとされる。過去にトランプ大統領が消費者の反発を避けるため関税の対象から製品を除外した例もあり、今回もホリデーシーズンを意識して段階的な導入になる可能性がある。
業界への影響
すでにAIデータセンター向けの高性能半導体をめぐっては、業界全体が調達に苦慮している状況にある。ここに広範な関税が重なれば、クラウド事業者や半導体メーカーの投資計画に加え、最新のAI機能を搭載した製品の発売時期にも影響が及ぶ可能性がある。関税の最終的な枠組みは今後も変化する見通しで、AI関連企業への例外措置の有無が焦点になる。