好決算を発表した直後、4000人のレイオフを公表する——。テクノロジー企業の意思決定が、利益の最大化よりも「AI 時代への対応」を優先する時代が来ています。

過去最高の売上に、過去最大の構造転換

2026年度第3四半期、Cisco は以下の好調な業績を報告しました:

  • 売上: 158億ドル(前年同期比 +12%、過去最高)
  • 純利益: 34億ドル(+35%)
  • AI インフラ受注: 当会計年度で 53 億ドル、通年見込みを 50 億ドルから 90 億ドルに上方修正

まさに「絶好調」の状況です。

にもかかわらず、CEO のJewell Robbins は即座に経営体制の転換を発表しました。約4000人の削減(全社員の5%未満)により、AI・サイバーセキュリティ・データセンター向けネットワーク装置・チップ開発へのリソース集中を急ぎます。

「成長部門へのシフト」という判断

Cisco の発表では、この構造転換を「需要と長期価値創造が最も強い分野へのリソース移動」と位置づけています。具体的には:

  • AI インフラストラクチャー: ハイパースケーラー向けの AI チップとネットワーク装置
  • 光ファイバー技術: データセンター間の高速通信
  • セキュリティ: サイバー脅威対策

言い換えれば、従来のネットワークスイッチやルーター、VPN などの成熟市場から、AI 時代に必要とされる基盤技術へシフトするということです。

削減対象は「低成長部門」

注目すべきは、Cisco が「高成長分野のために低成長分野から人員を移動させる」戦略をとっていることです。つまり、収益性が低い部門から人員を削減し、その分の予算を AI 関連にリアロケートしているわけです。

多くのテクノロジー企業が「コスト削減」を名目にリストラを行う中、Cisco は明確に「成長戦略の転換」として打ち出しています。

従業員への支援プログラム

影響を受ける従業員に対して、Cisco は1年間の無料オンライン講座(AI、サイバーセキュリティ、ネットワーク等)を提供します。つまり、失職者には「AI 時代に必要なスキルを学んでから去ってください」というメッセージです。

業界への示唆

Cisco の決定は、以下を意味しています:

  1. 好調な売上でも、AI への投資優先は譲らない: 短期利益よりも長期的な産業シフトを重視
  2. 従来型ビジネスは「低成長=削減対象」: クラウド・AI 時代に適応できない部門の人員削減は避けられない
  3. 大企業も「AI 投資競争」に本気: インフラ企業まで含めた業界全体の AI シフトが加速している

Cisco の決定は、単なる「リストラ」ではなく「AI 経済への体質改善」の信号です。