パリで開催されたテック見本市 Vivatech 2026 では、欧州のロボティクス企業が中国勢に対抗する新製品と戦略を相次いで発表した。2025年に全世界に導入された13000台のヒューマノイドロボットの87%が中国製(Unitree、Agibot など)という現状を前に、欧州企業は産業主権と地域特性を武器に巻き返しを図っている。

欧州各国の戦略

フランスの Enchanted Tools は多言語対応ロボット Mirokai を展示。50言語以上に対応し、すでに病院や空港で運用されている。同社は製造の60%を欧州で実現する目標を掲げ、サプライチェーンの域内自給を加速させる方針だ。同じくフランスの Genesis AI は Eno という多機能ロボットを開発。現在中国で生産されているが、2026年に生産を欧州にシフトさせる計画を進めている。

ドイツの Neura Robotics は業界を主導する立場を確立しつつある。同社は14億ドルの資金調達を実現し、注文残高が10億ドルを超える。Bosch や Schaeffler といった欧州の産業大手と提携し、産業用と家庭用の両領域でロボットを開発している。スペインの PAL Robotics は Kangaroo という二脚走行ロボットと、葡萄収穫用の多関節腕ロボット Tiago で、農業と食品産業向けのニッチ領域を狙っている。

直面する共通課題

各社が共通して指摘するのが、AI 専門知識と計算リソースの不足である。NVIDIA の GPU は依然として米国企業に依存しており、欧州での安定供給が課題となっている。また「規制の厳しさと資金調達の困難」も言及されており、欧州企業が中国の大規模投資と異なるスピード感で事業展開を余儀なくされている現状が浮かぶ。

業界指導部は「完全な欧州サプライチェーンの必要性」を繰り返し主張している。データ保護と産業主権の両面から、計算機器から AI モデル開発まで一貫した域内でのエコシステム構築が不可欠だと認識している。

業界への影響

中国ロボット企業による圧倒的な市場シェアは、単なる競争の問題ではなく、産業基盤とデータ主権の問題と結びついている。欧州企業は規模では劣るが、医療、農業、工業といった特定セクターでの高機能化と欧州規制への適応によって、グローバル競争で足掛かりを確保しようとしている。Vivatech での相次ぐ発表は、欧州ロボティクス産業が単なる市場回復ではなく、戦略的な産業再編成の局面に入ったことを示唆している。