中国政府がNvidiaのゲーミング向けGPU「RTX Pro 5500」について、AlibabaやByteDanceなど主要AI企業に調達計画の提出を求めていることが明らかになった。米中首脳会談の裏側で進むこの動きは、Nvidiaが対中輸出規制の緩和で得た事実上の勝利であり、CEOのJensen Huang氏がトランプ大統領のAI政策に及ぼす影響力の大きさを改めて浮き彫りにしている。

ByteDanceは100万個規模の調達を計画

情報筋がThe Informationに語ったところによると、中国の産業・情報化省(工業和信息化部)はAlibabaとByteDanceに対し、RTX Pro 5500の使用計画の詳細提出を要請した。RTX Pro 5500はゲーミング向けチップだが、サーバーに搭載して国内で需要の高いAIモデルの稼働を支える用途が見込まれている。あるバイヤーは1台のサーバーに8基のRTX Pro 5500を搭載する構成を計画しているという。中国が承認すればByteDanceは100万個規模の発注を計画しており、これだけでNvidiaの向こう2四半期分の売上を実質的に確保する規模になる。出荷は12月にも始まる見通しだ。

Nvidiaにとって中国市場は長らく苦戦が続いていた分野だ。Huang氏は、米国の輸出規制によって中国の先端AIチップ市場におけるシェアが約95%からゼロにまで落ち込んだと説明している。直近四半期のデータセンター売上に占める中国向け売上の比率は1%未満にとどまり、H200チップの中国向け販売承認の遅れも重荷となっていた。

トランプ大統領の政策転換とHuang氏の存在感

トランプ大統領は就任当初、Nvidiaの分割まで検討するなど強硬姿勢を見せ、H200チップの中国向け輸出を禁止するなど規制を一段と強化していた。しかし、Huang氏とマール・ア・ラーゴで夕食を共にして以降、姿勢は一変する。トランプ氏はH200の輸出規制を解除し、以降は公の場での共演や頻繁な電話でのやり取りが続いているという。

Nvidiaに関する著書「The Thinking Machine」の著者スティーブン・ウィット氏はNPRの取材に対し、トランプ氏が最近示す「AIが人類を滅ぼすというのはでたらめだ」といった発言について、「まさにJensenの持論そのものだ」と指摘した。ウィット氏によれば、Huang氏は「Jensenは今や大統領のテクノロジー分野における最も影響力のある助言者だ」との見方を示しており、ベッセント財務長官も米中首脳会談を前に「大統領はNvidiaのCEOであるJensen Huangと完全に足並みをそろえている」と認めている。

安全保障との綱引き

この動きは、AI企業自身が政府に求める安全性への配慮と、Nvidiaの商業的利害との間で緊張をはらむ。米連邦捜査局(FBI)は中国企業6社が米国の最先端モデルを積極的に模倣していると非難する一方、Huang氏は他社製品からの「蒸留」について「窃盗ではなく競争だ」との立場を取っている。AI安全性の非営利団体CivAIの研究者は、Nvidiaについて「あらゆる局面で自社の利益を最優先している」と評した。

米中両国とも、AIの開発速度を落とす姿勢は見せていない。批評家の間では、規制緩和が続けば米国内のデータセンターが必要とするチップの供給が細る懸念も指摘されている。中国のAI企業がチップの確保に追われる中、Nvidiaの中国向け販売動向は今後の米中AI覇権競争の行方を占う指標の一つになりそうだ。