Salesforce 前最高科学責任者 Richard Socher は、AI 自身が研究を自動化・改善するシステムの実装を目指すスタートアップを立ち上げ、$650M の資金調達を完了しました。同スタートアップは、「試行錯誤のサイクル全体(構想→実装→検証)の自動化」を通じた「再帰的自己改善」の実現を目指しており、AI パラダイムの根本的な転換を狙っています。

スタートアップの目標:AI が独立的に自分を改善する

Socher が掲げるビジョンは、AI モデルが単なる計算エンジンではなく、「研究者」として機能すること。従来の改善は人間の指示に基づいていましたが、このスタートアップは以下のプロセスを完全自動化しようとしています。

  • 弱点の発見:AI が自モデルの性能低下領域を自動検出
  • 仮説生成:改善方法の研究アイデアを自生成
  • 実装と検証:改善案の実装とテストを自動実行
  • フィードバック統合:結果に基づくモデル更新(人間介入なし)

最強クラスの研究チーム:OpenAI、DeepMind 出身者で結成

スタートアップのメンバーは AI 研究のビッグネームぞろい。

  • Richard Socher:You.com 創業者、ImageNet 研究者
  • Peter Norvig:Google の著名 AI 研究者
  • Tim Rocktäschel:Google DeepMind で「open-endedness」と自己改善チームを主導
  • Josh Tobin:OpenAI Codex 開発チーム統括(研究責任者)
  • Tim Shi:Cresta の共同創業者

チーム約 20 名には、OpenAI、Meta、Google DeepMind 出身の研究者が多数含まれており、「自己改善」というテーマに対して業界最高峰の才能が集結しています。

技術的手法:共進化とレインボーティーミング

自己改善を実現するための主要な技術戦略は以下の通り。

  • Open-endedness(開放性):単なる既知の目標達成ではなく、未知の領域の発見・開拓を AI 自身が追求
  • Co-evolutionary techniques(共進化):複数の AI が互いに相互作用し、数百万回のイテレーション化で進化。特に「レインボーティーミング」と呼ばれる技法で、異なるアーキテクチャの AI が協力・競争しながら改善

これにより、人間が事前に定義した目標に依存しない、より汎用的な自己改善が可能になると考えられています。

製品化タイムライン:「数年後」ではなく「数四半期以内」

Socher は製品の出荷を「数四半期」内と明言。AI 企業の中でも異例の短い時間軸を設定しており、技術のデモンストレーション・初期製品の公開が 2026 年中にも期待されています。

一方で、このアプローチの成否は「open-endedness」の実装精度と、共進化アルゴリズムの実装効率に大きく左右されます。実験レベルではなく、実用的な規模での実装が成功するか注視が必要です。

業界へのインパクト

自己改善する AI の登場は、複数の観点で業界を大きく変える可能性があります。

  • 研究プロセスの加速:AI 自身が改善方法を試行すれば、従来のように人間が仮説を立てるサイクルが短縮
  • スケーリングの新段階:単なるデータ量やコンピュート増加ではなく、AI 自身の「改善能力」がスケールする可能性
  • AGI への道筋:AI が自立的に問題解決能力を拡張する枠組みは、汎用人工知能へのステップとしても機能

同時に、セキュリティや制御可能性の観点から、「AI が人間の指示なく改善を続ける」ことのリスク評価も急務となります。