トランプ大統領は、フロンティアAI企業のトップが相次いで開発ペースの見直しを呼びかけたことを受け、AI安全規制の必要性を真っ向から否定した。Truth Socialへの投稿で「AIとデータセンターに対するSICK(病的)な陰謀が進行しており、喜んでいるのは中国だけだ」と主張し、「唯一必要な管理は、強く賢い大統領であり、米国にはそれがある」と述べた。

発端はAmodei氏らの減速要請

一連の対立は、Anthropicのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)がOpenAIのサム・アルトマンCEO、xAI・SpaceXのイーロン・マスクCEOとともに、フロンティアAIモデルの開発ペースを緩めるよう業界に呼びかけたことに端を発する。安全性の担保や法的責任の明確化、国家安全保障への配慮を理由に挙げていた。

トランプ氏はこの動きに反応し、AIが人類を脅かすという懸念を「HOAX(デマ)」と表現。AI産業を「歴史上最大の経済発展エンジン」と位置づけ、政府は既に「圧倒的な刑事・規制権限」を企業に対して持っていると強調した。アモデイ氏個人についても名指しで、「完璧な天使のふりをしている」と批判した。データセンター拡張についても「米国がAI競争で圧倒的にリードしている理由だ。金の卵を産むガチョウを殺してはならない」と擁護した。

世論は与党支持層でも懸念が拡大

NBC Newsの世論調査によると、米国成人の70%がAIについて期待より懸念を強く感じており、69%がデータセンター建設に反対と回答した。特筆すべきは、共和党支持層に限っても57%が反対に回っている点で、AI推進を掲げるトランプ政権の立場と有権者感情の間にずれが生じつつある。

議会は中間選挙前に規制方針で分裂

議会内の反応も一枚岩ではない。民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、政府高官による公開説明会の開催を要求した。共和党内でも温度差があり、マーク・ワーナー上院議員は「長期的にはAI推進派」としつつ一定の規制の必要性を認める一方、ジョン・ケネディ上院議員は中間選挙が終わるまでAI規制が実現する可能性は低いとの見方を示した。

AI政策が中間選挙を控えた重要な争点として浮上しており、与野党のいずれもが有権者の懸念の高まりと、AI企業・データセンター誘致による経済効果との板挟みに置かれている。今後は、フロンティアAI企業側の自主的な減速表明と、ホワイトハウスの規制緩和路線がどこまで両立できるかが焦点になる。