AI 業界の勢力図が急速に二極化している。The Information の分析によれば、AI スタートアップ業界全体が生み出す年間収益のうち、わずか2社で89% を占めるという極端な集中が起きている。

80 億ドルを独占する2社

The Information が 34 社の AI スタートアップを調査した結果、業界全体の年間収益は約 80 億ドル(約1兆2000億円)に達する。その内訳は衝撃的だ。

Anthropic と OpenAI がこのうち 89% を占める。つまり、34 社のうち 32 社の合計よりも、この 2 社だけの方が遥かに大きな収入を生み出しているということだ。

Anthropic は最近、OpenAI を抜いて業界トップの売上を記録した。特にコード生成・開発者向けツール(Claude Code など)の成功が、企業向けの需要を大きく引き上げた。

共有と転送の複雑性

ただし、この数字は見かけほど単純ではない。

Anthropic の収入の一部は Amazon と Google に共有されている。同社は Amazon から最大 40 億ドル、Google からも大規模な投資を受けており、その見返りとして収益配分がある。同様に OpenAI は、2030年までの間、年間収入の 20% を Microsoft に転送する契約を結んでいる。

つまり、名目上の「Anthropic と OpenAI の独占」も、複数の大手科学技術企業との利益分配による、より複雑な構図がある。

次点の企業群

Anthropic と OpenAI に次ぐ企業として、以下の 3 社が 5 億ドル以上の年間収入を達成している:

  • Perplexity(検索・AI アシスタント)
  • ElevenLabs(音声合成)
  • Cognition(AI コーディングプラットフォーム)

これらの企業も注目を集める一方で、業界全体の 11% という限定的な市場シェアに甘んじている。

巨大な支出負担

Anthropic と OpenAI のもう1つの特徴は、支出の大きさだ。この 2 社だけで、毎年 30 億ドル以上を「消費」している。その大部分は、より大規模で高性能なモデルを開発するための計算リソース(GPU など)の学習コストに充てられている。

つまり、業界全体の収入の 75% を生み出しながら、同時に業界全体の支出の大部分も担っているという、不可思議なバランスになっている。

構造的な問題

The Information の分析が指摘する重要なポイントは、以下の通りだ。

AI 業界全体で見ると、最大の価値は「基盤モデル開発」の段階で生まれている。その基盤モデルの上に構築される「アプリケーション層」の企業たちは、相対的に価値を獲得しにくい構造になっている。

多くのスタートアップが Claude や GPT を API で利用し、その上にアプリケーションを構築している。しかし、最終顧客がほしいのは結局のところ「より優れた基盤モデル」であり、その上のアプリケーション層への依存度は低い。

この構造が続く限り、基盤モデル企業(Anthropic、OpenAI、そして Google や Meta)への価値集中は避けられない可能性が高い。

投資家の読み

投資家の判断も同じ方向を指している。AI への巨額投資が続く一方で、新興スタートアップへの資金流入は、基盤モデル開発企業へ集中しており、その他の層への流れは徐々に冷え込みつつある。

アプリケーション層で成功するには、より高い差別化やユーザー粘着性が必要になるという課題を、多くのスタートアップが直面している。