半導体製造装置大手のASMLが、TSMC・Samsung・Intelの3社と共同で、次世代EUV(極端紫外線)露光装置向けに大型の12インチフォトマスクへ業界全体で移行する取り組みを発表した。AIチップの需要拡大でスループット向上とコスト低減が急務となる中、装置メーカーとチップメーカーが足並みをそろえて生産効率の改善に動く形だ。

何が発表されたか

現在の高NA(開口数)EUV露光装置は6インチのフォトマスクを使用しているが、大型化した12インチマスクを採用すればステッチング制約が解消され、スキャナーの生産性が向上する。ASML・TSMC・Samsung・Intelの4社は、2031年までに12インチマスクの試験生産ラインを確立し、2033年までに12インチ対応の高NA EUVシステムを先端ノードの量産に投入する計画を明らかにした。

ASMLの最高経営責任者Christophe Fouquet氏は、高NA EUVの採用は「まず6インチマスク、その後12インチマスクという段階を踏んで進む」と説明。TSMC会長のC.C. Wei氏は「業界全体で協力することで、単独企業では実現できない可能性を切り開ける」と述べ、装置・製造の垣根を越えた連携の意義を強調した。

各社の導入スケジュール

Samsungは2028年からDRAM製品の製造に高NA EUVを投入する計画で、TSMCは2030年から先端ノードの量産に高容量で採用する予定だ。一方Intelは既にPanther Lake世代の一部プロセッサ(18Aプロセス)で高NA EUV装置を実運用しており、これまでに100万枚を超えるウエハーを処理済みで、他の全チップメーカーの合計を上回るペースで技術を先行導入している。

AI投資が生む供給網の圧力

この協業の背景には、AIチップの需要急増によるファブ(製造拠点)の能力拡張競争がある。ASMLのEUV露光装置は最先端半導体製造に不可欠な唯一の技術であり、1台あたり最大4億ドルに達する高額な装置だ。TSMCの売上のうち約16%はASML製装置への依存度と連動しているとされ、装置供給網のボトルネック解消はAIチップの生産量そのものを左右する。

一方で中国のHuaweiは、この装置依存から脱却する動きを加速させている。より成熟したDUV(深紫外線、波長193ナノメートル)技術の自給化を進めており、上海のYuliangshengが開発した国産DUV装置をSMICで検証段階に入れているほか、Huaweiの投資部門Haboはドイツの光学大手Zeissに対抗する企業への出資を通じて、光学技術の内製化を後押ししている。

読者への影響

今回の合意は、AIチップの供給能力を左右する半導体製造装置の技術ロードマップが、単一企業ではなく業界標準として固まりつつあることを示す。TSMCやSamsungの高NA EUV投入が本格化する2028年から2030年にかけて、NVIDIAやAMDなど先端チップの供給量・コストに影響が及ぶ可能性がある。一方でHuaweiが主導する中国勢のDUV自給化は、米国の対中輸出規制を回避する形で独自の半導体エコシステムを築く動きであり、AIチップを巡る東西の技術覇権競争が装置レベルでも一段と鮮明になっている。