米国立公文書館(National Archives)が運営する連邦官報(Federal Register)サイトで、Alibabaの軽量モデル「Qwen」が公開コメントの検索機能に使われていたことが、SNS上の指摘をきっかけに発覚した。米連邦捜査局(FBI)が今月、Alibabaを含む中国企業6社を「産業規模の蒸留(distillation)」の実施企業として名指ししていた直後の出来事で、指摘を受けたサイト運営側は該当のQwenモデルを撤去した。

SNSの指摘から発覚、1日で撤去

X(旧Twitter)のユーザー「tleilax___」が9月15日、連邦官報サイトでQwenモデルを検索オプションとして選べる画面のスクリーンショットを投稿し、拡散した。Reutersの報道によれば、サイトのソースコードのアーカイブから、Qwenモデルは水曜日(9月17日)に削除されたことが確認されており、少なくとも1日は稼働していたことになる。国立公文書館、ホワイトハウス、FBIのいずれも、取材に対してコメントしていない。

FBIの警告と矛盾する運用

FBIは今月、Alibabaを含む中国企業6社が、米国のフロンティアAIモデルを違法に模倣する「産業規模の蒸留」を行い、中国が世界のAI開発競争でコストと開発期間を削減する一因になっていると指摘していた。米情報技術・イノベーション財団(ITIF)のダニエル・カストロ会長は、FBIが米国製モデルの使用を推奨する一方で、米政府機関自らがAlibaba製モデルを使っていたことを「常軌を逸している」とReutersに語った。

実際のリスクは限定的との見方

中国メディアのSina.comによれば、連邦官報サイトが使用していたのは「Qwen3 0.6B」水準のオープンウェイトの小型モデルで、文書検索専用の用途にとどまり、複雑な推論や政府データのAlibabaへの送信は行わないという。ジョージタウン大学法学教授のアヌパム・チャンダー氏は、サイトの内容はもともと公開情報であるため「機微な政府情報を扱っていたわけではない」と指摘する。むしろ、モデルをローカルでダウンロードして動かせる点は、外部のより大規模なモデルへ問い合わせるより政府側のデータ管理を強化できるとの見方もある。

米国のオープンソースAI戦略への含意

一方で、下院中国特別委員会のジョン・ムーレナー委員長(共和党)は「連邦政府機関は中国製AIモデルを一切使うべきではない」とReutersに述べ、強硬な立場を崩していない。米議会向けに提出された政策研究は、米国の輸出規制が先端半導体へのアクセス制限に偏っており、少ない計算資源で動く小型・特化型・オープンウェイトモデルの普及という別の競争軸には対応できていないと指摘する。今回の一件は、米政府内でさえ中国製オープンウェイトモデルの実用性の高さと安全保障上の懸念が綱引きしている実態を映し出している。