トランプ大統領は9月29日、米政府サービスへの窓口を一本化するAIチャットボット「America.gov」を発表した。数万件に散らばる政府サイトを横断検索できる仕組みで、パスポート申請やメディケア登録、キャンプ場予約まで幅広い手続きに対応する。基盤にはGoogleのGeminiとxAIのGrokが使われている。

「単一の窓口」を目指す政府DX

America.govは、市民が個別の省庁サイトを探し回る手間をなくし、1つのチャット窓口から必要な情報や手続きにたどり着けるようにする狙いだ。トランプ氏は発表で「市民が数万のウェブサイトと規則の迷路を強いられるのではなく、あらゆる質問への単一の窓口を得られる」と述べた。

トランプ氏は同時に大統領令にも署名しており、一般調達局(GSA)や国家デザインスタジオ、行政管理予算局(OMB)に対し、America.govを「オンラインでの連邦サービスへの単一の入口」として位置づけるよう指示した。各省庁にも自らの公開サービスをAmerica.govへ統合するよう求めており、将来的には「米政府に必要なあらゆるもの」を1つのプラットフォームで完結させる構想を掲げている。

GeminiとGrokを併用、2.9万サイトを統合

Google公共部門担当のJim Kelly副社長は自社ブログで、Geminiの自然言語処理とデータ統合能力を使い、America.govの検索機能の最適化や定型問い合わせの自動化、情報提供の迅速化を支援すると説明した。Googleは「1億人以上がより迅速かつ簡単に公的リソースへアクセスできるようにする」ことを目標に掲げている。

FedScoopの取材によると、America.govはGeminiとGrokを組み合わせて動作しており、約2万9000件の政府ウェブサイトから情報を統合する。英語・スペイン語・フランス語での質問応答に対応し、アプリのダウンロードは不要でブラウザから利用できる。ログイン不要で広告も表示されない。将来的にはID認証基盤のLogin.govとも統合し、2027年までに申請書提出や手続きの進捗管理といった機能を追加する計画だ。

プライバシー面では、検索履歴を保存せず、位置情報もGPSではなく概算地域のみを使用するとしている。FedScoopはAI事業者側が「プロンプトと応答を保持しない」とする一方、America.gov側は「ハッシュ化したプロンプトを使って最大2時間、応答をキャッシュする」仕様になっていると報じており、プライバシーの詳細な運用にはなお不透明な部分が残る。

AIの誤情報リスクという懸案

TechCrunchは、大規模言語モデル(LLM)が誤った情報を生成する「幻覚」のリスクを重ねて指摘している。同記事は過去に米軍がAIの誤判断により標的を核兵器運搬船と誤認し、作戦を直前で中止した事例を挙げ、生活保護申請やビザ更新、税申告といった行政手続きでAIが誤情報を返せば、期限超過や給付の拒否、罰金といった実害につながりかねないと警告する。

行政手続きは市民生活に直結するだけに、利便性向上と誤情報リスクのバランスをどう取るかが今後の運用における焦点になる。America.govは今回が「第一段階」の公開であり、2027年に向けて機能を拡張しながら精度と信頼性をどう担保していくかが問われることになりそうだ。