Appleが、独自チップ「M8 Ultra」を搭載した企業向けAIサーバーの開発を進めていると報じられた。The Informationが匿名の関係者情報として報じたもので、AI開発者や企業、政府機関を主なターゲットに、生成AIの推論処理(すでに訓練済みのモデルを実行する処理)に特化した製品になるという。

2基または4基構成、Nvidia技術の採用も検討

計画されている製品は2つのバージョンに分かれる。M8 Ultraを2基搭載する標準構成と、4基搭載する高性能構成だ。データセンター内でチップ間を高速に接続する技術として、AppleはNvidiaの「NVLink Fusion」の採用を検討している。NVLinkはもともとNvidia自社チップ向けの技術だったが、サードパーティー製ハードウェアにも開放されている。発売は早くても2029年になる見通しで、計画自体が変更・撤回される可能性も残っている。

Mac売上の急増とAI企業によるまとめ買いが背景

今回の動きの背景には、AI関連需要によるApple製品の販売増がある。直近の四半期決算でMacの売上高は前年同期比で約28%増加し、104億ドルに達した。OpenAIやAnthropicといったAIラボが、コンピュータ操作エージェントの訓練用にMac MiniやMac Studioを大量購入している実態も背景として指摘されている。Appleが数十年ぶりに企業向けサーバー市場へ本格参入する可能性が出てきたことになる。

エンタープライズAI市場の競争構図に影響

Nvidiaが依然としてAI向けチップ市場を支配する中、Appleが省電力性能を強みとする独自シリコンでエンタープライズ推論市場に参入すれば、競争環境に変化をもたらす可能性がある。Nvidiaとの提携が実現すれば、両社の関係は競合と協業が同時に進む複雑なものになる。ただし発売までは3年以上先であり、AI業界の技術動向やApple自身の戦略変更によって計画が大きく変わる余地は大きい。