Appleは新型「Apple Watch Series 12」と「Apple Watch Ultra 4」に、マイクとApple Silicon、オンデバイス・クラウド両方のAIモデルを組み合わせた新機能群「Audio Intelligence(音声インテリジェンス)」を搭載した。会話を自動的に文字起こし・要約する機能が中心で、便利さと同時に「常時リスニング」への抵抗感を薄める製品だとの指摘も出ている。

3つの新機能

Audio Intelligenceは主に3つの機能で構成される。「Sound Recognition」はサイレンやドアベル、赤ちゃんの泣き声などの環境音を検出し、iPhoneがなくても聴覚障害者向けに通知する。「Live Rewind」はデジタルクラウンをダブルプレスすると直前15秒間の会話をテキストで表示し、聞き逃した発言を確認できる。「Siri Recap」は会話終了後にApple Intelligenceが自動でタイトルと要点をまとめ、Siriアプリに保存する仕組みだ。Live RewindとSiri Recapは英語圏から始まるベータ版として年内に提供される予定で、Siri Recapはデフォルトで無効になっている。

Appleが強調するプライバシー対策

Appleは生音声データを保存せず、Apple自身も音声にアクセスできないと説明する。生成されたテキストはエンド・ツー・エンドで暗号化され、話者の識別や属性付けも行わない設計だという。これらの対策は、常時マイクを使う機能に対する利用者の不安を軽減する狙いがあるとみられる。

同意なき録音への懸念

一方で、TechCrunchは、ユーザーが相手の明示的な同意を得ずに会話を記録・要約できる点が、法的・倫理的な同意の問題を新たに生むと指摘する。競合するAIウェアラブル企業のPlaudは録音前に法的に必要な同意を取得するよう顧客に助言し、AmazonのBeeはユーザー自身に法令順守の責任を負わせる規約を設けている。Appleがどこまでこの問題に対応しているかは明確でない。

デジタルクラウンの小さなジェスチャーだけで録音が始まる操作性は、カメラを構える動作より目立たないため、周囲が録音の開始に気づきにくいという懸念もある。研究では、記録装置の存在自体が人間関係や自己表現のあり方に影響を与える可能性が示されており、常時リスニング機能が日常に組み込まれることの社会的な影響も論点となっている。

業界の流れとユーザーへの影響

OpenAIやAmazon(Bee)、Plaudなど複数の企業がAI搭載ウェアラブルで常時リスニング機能を競って導入する中、Appleの参入は競争上の判断とも受け止められている。文字起こしのみで音声データが残らない設計は法廷での証拠採用の可否など新たな論点も生みつつあり、ユーザーは便利な記憶補助機能を得る一方、周囲の人間関係における同意のあり方を意識する必要が出てきている。