ウォール街がAIによるエンタープライズソフトウェアの廃止を懸念する中、大手ソフトウェア企業がAIエージェント市場での覇権争いを激化させている。

Salesforce、高度なタスクに対応する Agent Albert を投入

Salesforce は年末までに「Agent Albert」をリリース予定。同社の CEO Marc Benioff は「SaaSpocalypse」と呼ばれるウォール街の懸念に対抗するため、新型エージェント開発に注力している。同社の既存製品 Agentforce は2024年後半のローンチ以来、基本的なタスク自動化で成功し、Pearson では自動対応率が40%増加した。

しかし Agentforce にも課題がある。顧客からの曖昧な依頼に対応できず、例えば Pandora では「あいまいな顧客要求に対して信頼性の高い推奨を提供できない」という問題が報告されている。同社の顧客数は150,000社に及ぶが、Agentforce の採用は23,000社にとどまっており、Salesforce はより汎用性の高いエージェント技術で採用を加速させる狙いだ。

Adobe が 30 社以上のパートナーとエコシステムを構築

Adobe は「CX Enterprise」と呼ぶ AI エージェントプラットフォームを展開。デジタルマーケティング、顧客エンゲージメント、営業オペレーション自動化の統合を実現している。

同プラットフォームの核となる「CX Enterprise Coworker」は、複数エージェントの調整、ビジネスデータ収集、マーケティングプランの実行を独立して処理可能。Adobe は OpenAI、Anthropic、Microsoft、Amazon を含む 30 社以上との生態系パートナーシップを構築し、「業界で最も広いエージェントベースの AI エコシステム」を標榜している。

Hyatt、ChatGPT Enterprise で従業員を全面 AI 対応化

OpenAI との提携により、Hyatt は ChatGPT Enterprise を全従業員に展開。GPT-5.4 および Codex を活用して、業務生産性、オペレーション効率、ゲスト体験の向上を実現する。同社は既に AI チャットアプリを顧客向けに提供しており、グループセールス業務では営業効率が約 20% 向上。Hyatt は AI をインフラシフトとして認識し、社内の複数大規模言語モデル運用を拡大している。

市場の課題:採用率と信頼性

Salesforce 、Adobe 、Hyatt の動きが象徴するのは、エンタープライズAI市場の課題だ。マーケット懸念に対抗する企業が続々と新製品を投入する一方で、Agentforce の低採用率に見られるように、実運用での信頼性やユースケースの確実性がまだ確立されていない。複雑な判断が必要な業務にAIエージェントが対応できるか、エンタープライズの現場がこれから検証する段階にあるということだ。