中国製AIモデル、政治的に敏感な質問の大半で党の立場を反映、米国製にも波及
Aleph Alphaの検証で、QwenやDeepSeekなど中国製LLMは政敏感質問の6〜8割で中国共産党の立場を反映すると判明。蒸留データ経由でNVIDIAのモデルにも党の主張が混入していた。
ドイツのAI企業Aleph Alphaが実施した検証で、中国製の大規模言語モデル(LLM)の多くが、政治的に敏感な質問に対して中国共産党の立場をそのまま反映した回答を返すことが分かった。さらに、こうした党の主張が学習データの蒸留(distillation)を経由して、米国企業のモデルにまで混入していたことも判明した。
967のプロンプトで検証
Aleph Alphaの研究チームは、天安門事件や台湾、香港、新疆、チベットといった歴史的・政治的タブーに加え、報道の自由や人権、民主的選挙など56の敏感トピックから967のプロンプトを作成した。GPT-OSS 120Bを使って質問文を生成し、各モデルの回答を「党の立場を反映」「バランスの取れた回答」「回答拒否」の3分類でLLMジャッジに評価させた。
対象となったのはAlibabaのQwenシリーズ、DeepSeekの複数世代、Moonshot AIのKimiシリーズ、そしてNVIDIAのNemotron Cascade 2やMistral Smallだ。
中国製モデルは6〜8割が党の立場を反映
結果は中国製モデルと西側モデルで大きく分かれた。Qwen 3.6 35B-A3Bはバランスの取れた回答が17%にとどまり、80%が党の立場を反映した回答だった。DeepSeek R1 0528はバランスの取れた回答22%、党の立場反映77%。Kimi K2.5は比較的バランスが取れていたが、それでも党の立場反映は47%に達した。
一方、西側モデルのClaude Sonnet 5はバランスの取れた回答が70%、党の立場反映はわずか2.8%だった。中国の規制は、国内向けの公開LLMに「社会主義の核心的価値観」を体現させ、国家権力を揺るがしうる出力を禁じている。この規制環境が、モデルの回答傾向に直接反映されている格好だ。
NVIDIAのモデルにも党の主張が混入
もっとも注目すべき発見は、米国企業NVIDIAのNemotron Cascade 2に関するものだ。このモデルの教師付きファインチューニング(SFT)データ、930万行のチャットデータのうち約3,500行に、DeepSeekやQwenが生成した回答から派生した「党のトーキングポイント」が含まれていた。結果としてNemotron Cascade 2は、評価対象プロンプトの17%で党の立場を反映した回答を示した。
これは、オープンにライセンスされた中国製モデルの出力を使ってSFTデータを合成する際に生じるリスクを示す具体例だ。開発チームが意図していなくても、学習データの出自をたどらなければ、政治的バイアスが別のモデルへ静かに継承されてしまう。
開発者が選ぶモデルの出自が問われる
この結果は、企業や開発者がどのLLMを選ぶか、またどのデータで追加学習を行うかを考える際の新しい論点を提示する。モデルの性能やコストだけでなく、学習データの系譜まで検証しなければ、意図しない形で政治的バイアスを引き継ぐ可能性がある。
Aleph Alphaの検証は、EUのように米中両方の価値体系の間に立つ地域にとって、競争力のある独自のAIモデルを持つ必要性を改めて示すものでもある。独自モデルを持たない限り、「二つの外国の価値体系のどちらかを選ぶ」状況に置かれかねないと指摘されている。