Google が Chrome のセキュリティ強化で新たな段階へ進んだ。Chrome 149 と 150(2026 年 6 月リリース)で 1,072 件のセキュリティバグを修正。これは過去 2 年間(23 バージョン)の合計 1,036 件を、わずか 2 ヶ月で上回った。

この加速の背景にあるのは、Google 内部の AI ツール——主に Gemini などの大規模言語モデル——の活用による脆弱性検出の工業規模化だ。

AI が変えたバグハンティングのスケール

Chrome セキュリティチームの責任者 Doug Turner は、LLM が「脆弱性発見を自動化された大規模産業的な作業に変換した」と述べている。従来は人間のセキュリティ研究者が手作業で脆弱性を探していたが、AI が継続的にコードベース全体をスキャンし、潜在的なセキュリティ欠陥を自動検出できるようになった。

公開されたデータは劇的な右肩上がりを示している:

  • Chrome 126(2024 年 6 月): 月間バグ修正数は低かった
  • Chrome 149 ~ 150(2026 年 6 月): 月間 1,000 件以上に到達

この傾向は 指数関数的 で、従来の直線的な改善とは様相が異なる。

Gemini が何をしているのか

Google は具体的なアルゴリズムを明かしていないが、Gemini を含む LLM がコード解析に使われていることは確実だ。これらのモデルは:

  1. ソースコード内の脆弱性パターンを認識
  2. 過去の CVE(一般公開脆弱性)をベースに類似バグを探索
  3. 修正コードを生成・検証

という一連のプロセスを自動化している。

セキュリティへの影響

修正速度の加速は、ユーザーにとって明らかなメリットがある:

  • 先制的な脆弱性対応: ハッカーに先駆けてバグを修正
  • パッチの頻度化: 従来は月 1 回のペースだったが、週 2 回のペースへ移行(一部バージョン)
  • 全体的なセキュリティ向上: Chrome を使用するユーザー数千万人が、より安全なブラウザを自動で受け取る

業界全体への波及

Google だけではない。Microsoft も同様の AI 駆動型バグハンティングを報告しており、業界全体として「セキュリティの自動化」が急速に進んでいる。一方 Apple は比較してこのような指数的増加を示していない。

つまり、セキュリティパッチは今後「AI の効率性」が重要な競争軸になることが明らかになった。

課題は継続的な環境維持

ただし注意点がある。AI による修正が加速する一方、新たな脆弱性が絶えず生まれるペースも同様に速い。Chrome 150 の 1,072 件は「修正成功」を示す一方、「それだけ多くの脆弱性が存在した」ことでもある。

長期的には、ユーザーの信頼を維持するため、Google はこのペースを 継続的に維持する必要がある。一度 AI バグハンティングが減速すれば、かえってセキュリティリスクが高まる可能性もある。

AI がもたらしたのは「効率性の飛躍」だが、それに伴う「責任の重さ」も同時にやってきたということだ。