インドは毎年 150 万人のコンピュータサイエンス卒業生を輩出しており、世界で最大規模の IT 人材供給国である。しかし 2025 年の Mercer-Mettl の調査によれば、就職適性を満たす卒業生はわずか 42.6% に過ぎない。その上、AI エージェント革命がインドの IT 産業を激変させようとしており、大学で学ぶスキルと産業が求めるスキルの乖離はかつてないほど深刻になっている。

インドの IT 産業が急速に縮小

インドの 3,150 億ドル規模の IT サービス産業は、わずか 1 週間で 800 億ドルの時価総額を失った。株価指数である Nifty IT Index は約 20% 下落し、2008 年金融危機以来の最大跌幅となった。Tata Consultancy Services(TCS)は既に世界的に 12,000 人のジョブカットを実施している。

McKinsey の推計では、2030 年までにインドの労働時間の 30% が AI により自動化される可能性がある。この数字が示すのは、従来の低コスト プログラマーに依存するビジネスモデルが根底から揺らいでいるという現実だ。

Infosys による緊急リトレーニング

Infosys は対応として、新入社員および既存社員向けに抜本的に改編された 19 週間から 23 週間のトレーニングプログラムを開始した。このプログラムは 45 の技術スタックをカバーしており、特に agentic AI(エージェント型 AI)の習得に重点を置いている。

注目すべきは、同社が採用基準を大きく変更したことである。従来は大学の学位が重視されていたが、現在は GitHub プロファイル(実装能力と開発成果の証)を優先する傾向が強まっている。実績を重視する採用姿勢への転換は、学歴よりも実践スキルが企業の必要性と合致していることを示唆している。

産業の「純粋なダーウィニズム」

Infosys の HR チーフである Sushanth Tharappan は、現在の状況を「pure Darwinism(純粋なダーウィニズム)」と表現した。つまり、成功は元来の強さではなく、変化への適応速度で決まるということだ。大学で身に付けた知識では数ヶ月で陳腐化し、継続的な学習と再スキル化なくして生き残れない業界へと変貌している。

150 万人のコンピュータサイエンス卒業生は、かつてインドの経済成長エンジンであった。だが AI エージェントが自動化可能なタスクを次々と奪う中、大学教育の現代化の遅れは深刻な就職難を生む可能性が高い。

ビジネスモデルの根本的な危機

インドの IT サービス産業を支えてきたのは、低コストで高いコーディング能力を持つプログラマーを大量に雇用するビジネスモデルであった。しかし自律的なコーディングを行える AI エージェントの普及は、このモデルの根底を揺さぶっている。

大学教育の改革、継続的なリスキリングの仕組み、そして業界全体の新たなビジネスモデル構築が急務となっている。インドが直面する課題は、同国の経済的地位だけでなく、全世界の IT 産業における教育と労働市場の未来を映す鏡となっている。