小型AIモデル搭載ドローンが標的を自律識別、NATO関連企業Scaleoutが実証
スウェーデンのScaleout Systemsが、通信途絶時でも自律稼働できるAI搭載ドローンを実証。BAE Systems Boforsとの共同開発で、フェデレーテッドラーニングを軍事用途に応用する。
スウェーデンのウプサラ大学発スタートアップScaleout Systemsが、小型のAIモデルを搭載し、通信が途絶した状況でも自律的に標的を識別できるドローンシステムを実証した。NATOの技術革新プログラム「DIANA」の採択企業であり、防衛大手BAE Systems Boforsが主導する低コスト自律型ドローンの開発プロジェクト「ALMA」(Affordable Loitering Modular Ammunition)に参画している。
外部通信なしでも脅威を検出・識別
Scaleoutが開発するシステムは、搭載したAIモデルによって「潜在的な脅威をすべて検出、識別、地理位置特定する」機能を備える。処理はすべてドローン上の専用コンピュータで完結し、外部サーバーとの通信に依存しないため、リアルタイムでの判断が可能になる。2026年1月にスウェーデンで開催された「Winter Demo 2026」で、この仕組みを使った自律型ドローンの実演が公開された。
同社の技術の核となるのは「フェデレーテッドラーニング」と呼ばれる分散型のAI学習手法だ。2026年6月にはスウェーデン空軍のウプサラ基地で実証実験が行われ、前線に配備した演算ノードが中央のコンピューティングノードとの接続を失っても、その場でAIの推論と学習処理を継続できることが示された。接続が復旧すれば、現場で更新されたAIモデルの学習結果が中央側と同期される仕組みになっている。
NATO加盟国間の協力基盤としての位置づけ
Scaleoutが開発する「FEDn」と呼ばれるこの分散学習の枠組みは、単一のドローンや基地にとどまらず、複数の地理的拠点や国をまたいだ規模へ拡張できる設計だという。同社はこの技術をNATO加盟国間での軍事AI協力の基盤になり得るものと位置づけており、通信インフラが破壊・妨害された戦場環境でも各拠点が独立して機能し続けられる耐障害性を強みとして打ち出している。
自律型兵器システムの実装段階への移行を示す事例
軍事分野でのAI活用をめぐっては、人間の関与なしに攻撃対象を選定・実行する「自律型兵器システム」の是非が国際的な論点になってきた。Scaleoutの取り組みは、こうした議論が理論段階を超え、NATO加盟国の実戦部隊レベルでの実証実験にまで進んでいることを示す一例だ。小型かつ低コストのAIモデルであっても、通信が制限された環境下で実用的な標的識別能力を発揮できることが示された意味は大きく、今後の防衛関連AI投資の方向性にも影響を与えそうだ。