Anthropicがオーストラリアで初めてとなるデータセンター利用契約を締結した。契約先はシンガポール拠点の開発会社Zerra DCで、クイーンズランド州の州都ブリスベンから約250キロ離れたWestern Downs地域で建設が進む「Western Downs Digital Park」の容量を確保する。稼働開始は2027年を予定している。

世界最大級の規模を推論用途に

確保するのはピーク容量2.16ギガワットで、平均的なオーストラリア家庭150万軒分の電力使用量に相当する規模だ。用途はモデルの学習ではなく推論処理で、冷却方式にはクローズドループの空冷システムを採用する。Anthropicは施設向けに再生可能エネルギーの電力購入契約(PPA)を確保し、送電網への接続費用も負担する方針という。契約の実行にはオーストラリアの外国投資審査委員会(FIRB)による承認が必要で、正式な稼働までにはこの手続きを経る必要がある。

豪州でのインフラ戦略が具体化

Anthropicは2026年4月にオーストラリア政府とAI安全性・研究協力のMOUを締結し、データセンターとエネルギーシステムへの投資検討を表明していた。その後、ロンドンやシドニーを拠点とするデータセンター契約専門チームの採用を進めるなど、海外インフラ確保への布石を重ねてきた経緯がある。今回の契約は、これらの動きが具体的な施設契約として実を結んだ最初の事例にあたる。

競合ではOpenAIが前年にシドニーでデータセンター契約を締結しており、主要AI企業がアジア太平洋地域での計算資源確保を競う構図が鮮明になっている。オーストラリア全体のAI関連投資は2030年までに約1500億豪ドル規模に達する可能性があるとされ、Western Downsの施設自体も4フェーズの拡張計画で総投資額319億豪ドル規模になる見通しだ。

推論専用の大規模拠点が2027年に稼働すれば、Anthropicはアジア太平洋地域のユーザー向けにClaudeのレイテンシ改善や処理能力の余裕を確保しやすくなる。オーストラリア政府にとっても、再生可能エネルギーと連動したデータセンター誘致のモデルケースとなる可能性がある。